いお日記

旅の記録を Twitter@107_2424

土合

平日、上越線下り方面の列車はわずか5本だ。水上を出発したE129系はゴウゴウと音を立ててトンネルを進んでゆく。

 

次は土合

 

何も見えない暗闇の中、車内の電光表示のみがその駅の存在を知らせる。

やがて列車が緩やかにスピードを落とすと白いベールに包まれたその駅は姿を現した。「日本一のモグラ駅」とも評される土合駅は下り線ホームから改札まで実に486段もの階段が存在し、その姿を下から見ると思わず圧倒されてしまいそうになる。そのホームは夏でも少し寒いほどであり白い霧に包まれていた。

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階段の横にはエスカレーターを設置するために設けられたと思われるスペースが存在するがその気配はなく絶え間なく水が流れている。

トンネルという人工物の中で水の流れる自然の音を聞く歪さに異様な雰囲気を感じながらもひとまず462段の階段を登りきる。するとツタにおおわれたガラス戸の外からまた違う水の音が聞こえてきた、湯桧曽川の清流である。虫の音も混じり自然を感じながら残り24段の階段を駆けてゆく。地上まで出ると有人駅であった頃の名残や朽ちた民家が時の流れを伝えていた。あと数十年もすればここに民家が存在していたことすら分からなくなるのだろう。

今日も列車は発車のベルもなく駅を去る。

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