いお日記

旅の記録を Twitter@107_2424

君ヶ浜

銚子駅から外川駅を結ぶ銚子電鉄

日本一有名な赤字私鉄と言っても過言ではないだろう。いや、ぬれ煎餅での利益が鉄道での利益を上回るこの会社はむしろ食品会社と言った方が正しいのかもしれない。

 

外川駅から徒歩で数分の廃ホテルを眺めた後、ゴトゴトとキャベツ畑の中を走る丸みを帯びた列車を追って細い道を進むと4本の柱が見えてきた。

 

君ヶ浜駅ロズウェルという愛称が付いているらしい。

 

かつて銚子電鉄にはヨーロッパ風の駅が並び、ここ君ヶ浜駅もスペイン風の駅舎が建っていたそうだ。駅舎(?)に近づくとなるほど確かに、細かい装飾の跡が窺える。しかし今では賑わいを見せる時期は初日の出くらいのものであとは閑散とした遺構が出迎えるのみになってしまった。

 

そんな廃墟と見間違えるような駅に近づくと1匹の老猫が出迎えに来た。いや、正確にはこの老猫の散歩コースに私がお邪魔したという形になるのだろう。

長年ここに住みこの場所を訪れる人間がどんな人間なのか大体分かっているのか、写真を撮っても特段気にする様子もなく日を浴びている。雲ひとつない空も相まってこの空間だけ時間が引き伸ばされるような感覚に陥り、この老猫がどれだけの時をこの駅と共に過ごし盛衰を見てきたかに思いを馳せる。有限の時間が無限に近づいていく。

刹那、そんな私の気持ちなど知らないと言わんばかりに気ままな猫はホームを飛び降り線路の向かいの茂みへと消えていってしまった。

 

あの猫が死ぬまではこの駅が存続していて欲しいものだ。そんなことを考えながらぬれ煎餅を持ち帰路に着くのであった。

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