いお日記

旅の記録を Twitter@107_2424

奥四万

『それでは四万の薬師様の奥に大きな滝があるが、そこへ行ってごらんなさい』

これは四万に伝わる摩耶姫伝説という説話の一節である。

 

奥四万湖を見た帰りに偶然、摩耶の滝への道を示す看板を見つけたのが全ての始まりだった。

最初は道も広く、有名な滝ということもあり軽い気持ちで森の中に入っていったが徐々に道は狭くなり不安定になっていった。雨上がりということもあり足元はすべりやすく、途中ヒルに襲われたり崩れた足場を進んだりと進んでいくにつれ道は過酷になっていく。携帯はもちろん圏外、万が一のことがあった場合助けを呼ぶ手段は道中の警鐘のみだ。足を踏み外せば数十メートル落ちそれすら使うことが出来ない。

段々と光が刺さなくなり不気味な雰囲気が漂ってきた。人骨が落ちていても何ら不思議ではないその場所で進む気力もなくなってきた頃、かすかに水の音が聞こえてきた。

その音が摩耶の滝の音という保証は何も無い。しかしその音にすがるより他はなかった。暗い道をただひたすらに進む。

そしてその時は突然訪れた。

行き止まりの先に巨大な水しぶきがあがる。あまりの迫力に息を飲む。それを形容する言葉は見つからない。

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山奥で凄まじい音と共に流れ落ちる滝。それは正しく伝説の滝であった。